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パーフェクトマッチの2020(父サトノクラウン)を語る

パーフェクトマッチの2020(父サトノクラウン)を語る
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クラブDMMバヌーシー 2020年2月15日生 生産牧場ノーザンファーム
調教師(美浦)宮田敬介 募集価格3,400万円 募集口数2,000口 1口あたり出資額17,000円

本馬の牝系を6代遡るとパロクサイドに辿り着く。パロクサイド系・パロクサイド一族と言えばサンデーサイレンスと共に日本競馬史を塗り替えた一族と言っていい。その名高きパロクサイド系について説明したい。ロマン溢れる血脈を感じる事が出来るハズだ。

まず手始めにダンデイアポロから。ダンデイアポロはパロクサイドの直仔ヒカリサイド(父ボールドリック)にニチドウアラシを交配した牡馬で、1988年の小倉3歳S(G3)覇者である。同レース勝利後は勝ち星に恵まれず、5歳時(現4歳表記)に入障。障害レースでも3勝した(障害成績 3-7-0-2)。
パロクサイドを祖母に持つ活躍馬と言えばリアルバースデーも忘れてはいけない。パロクサイドとエルセンタウロとの仔ヨドセローナがリアルシャダイと交配したのがこのリアルバースデーで、重賞勝ちこそ無いものの東京優駿(G1)2着、NHK杯(G2)2着、京都大賞典(G2)2着、アルゼンチン共和国杯(G2)2着、菊花賞(G1)3着、セントライト記念(G2)3着、AJCC(G3)3着とクラシック戦線を賑わせた。
リアルバースデーの母ヨドセローナはノーザンテーストとの間にマックホープという馬を産んだ。
マックホープグルームダンサーを交配したマクリスに、マンハッタンカフェをかけ合せたのがハーレムライン。同馬は2018年のアネモネS(OP)や2019年の谷川岳S(OP)を勝利した。マックホープの孫は他にも活躍馬が多数。
マックホープ×リアルシャダイのボンヌシャンスは2012年に函館記念(G3)と新潟記念(G3)を制したトランスワープ(父ファルブラヴ)を産んだ。
このボンヌシャンスはAJCC(G2)2着、毎日杯(G3)2着のインテレット(父アドマイヤベガ)も出している。

ボンヌシャンスと同配合のマッチポイントからはパープルエビス(父ジェイドロバリー)が出た。マッチポイントは今回の主役であるパーフェクトマッチの2020から見ると母母母にあたるので、しっかり押さえておく必要がある。
2002年の都大路S(OP)を勝利し、2000年のスプリングS(G2)2着、アーリントンC(G3)2着の実績がある。
だがマッチポイントの代表産駒はパープルエビスではない。トウカイポイント(父トウカイテイオー)だ。2002年マイルCS(G1)の覇者で、この年は中山記念(G2)も勝ち、暮れに香港遠征し香港マイル(G1)3着の実績を誇る。残念ながらセン馬のため種牡馬入りは出来なかった。貴重なトウカイテイオーの血を残せなかったのが心底惜しい。

これだけの活躍馬を説明しておきながら、これはすべて前座であると切り捨てる。
パロクサイド一族と言えばダイナカール系が本流だ。
ダイナカールはパロクサイド×ガーサントのシャダイフェザーにノーザンテーストを交配した牝馬で、1983年の優駿牝馬(G1)勝ち馬である。ここからは怒涛の名馬ラッシュにお付き合い頂きたい。
ダイナカールの第4仔エアグルーヴ(父トニービン)も1996年の優駿牝馬(G1)勝ち馬。母子2代でオークス制覇を果たす。他にも天皇賞秋(G1)1着、阪神3歳牝馬S(G1)2着、ジャパンカップ(G1)2着2回、有馬記念(G1)3着、宝塚記念(G1)3着、エリザベス女王杯(G1)3着と女傑の名を欲しいままにした。
エアグルーヴの初仔アドマイヤグルーヴ(父サンデーサイレンス)は2003年2004年のエリザベス女王杯(G1)を連覇。ダイナカールから続く母子3代優駿牝馬制覇を目論んだが、同年代に3冠馬スティルインラブがおり阻まれてしまった。アドマイヤグルーヴは繁殖入りしてから2冠馬ドゥラメンテ(父キングカメハメハ)を残した。ドゥラメンテは初年度から菊花賞馬タイトルホルダーを出しているのは記憶に新しいところ。
第4仔ソニックグルーヴ(父フレンチデピュティ)は未出走で繁殖牝馬入りしたが、その仔グルーヴィット(父ロードカナロア)が2019年の中京記念(G3)を制した。
またアドマイヤグルーヴの活躍もあって、2004年のセレクトセールエアグルーヴの第5仔ザサンデーフサイチ(父ダンスインザダーク)が5億1,450万円で落札された。なおザサンデーフサイチは生涯獲得賞金が7,196万円だったので、賞金だけの単純な回収率は13.99%に終わった。引退後は種牡馬入りしているものの、これまで16頭がデビューし勝ち上がりは僅か2頭。競馬の世界は厳しい。
エアグルーヴの第7仔はフォゲッタブル(父ダンスインザダーク)。G1成績は菊花賞の2着が最高順位で手が届かなかったが、ステイヤーズS(G2)とダイヤモンドS(G3)の勝ち鞍がある。これだけの血統馬だが種牡馬入りは果たせなかった。
エアグルーヴの第8仔にして最高傑作のルーラーシップ(父キングカメハメハ)。G1制覇は意外にもクイーンエリザベスC(G1)だけだが、宝塚記念(G1)2着、天皇賞秋(G1)3着、ジャパンカップ(G1)3着、有馬記念(G1)3着、東京優駿(G1)5着と常に世代のトップクラスの力を見せた。特に2012年の秋古馬3冠はすべて3着。堅実さは世代随一。種牡馬入りしてからは早速菊花賞馬キセキを輩出した。
エアグルーヴの第9仔はグルヴェイグ(父ディープインパクト)。2012年のマーメイドS(G3)を勝った。母になってからも2021年のローズS(G2)覇者で同年秋華賞(G1)3着のアンドヴァラナウト(父キングカメハメハ)を出している。

とまあトンデモナイ系統なんだけれど、「なんだパロクサイド系と言っても実質はエアグルーヴ系か」と思っていないか?甘い。まだまだ続くパロクサイド一族。ダイナカールの産駒はエアグルーヴだけではない。
ダイナカールの第2仔カーリーエンジェル(父ジャッジアンジェルーチ)も偉大な繁殖牝馬だ。

カーリーエンジェルの第2仔は悲運の名牝エガオヲミセテ(父サンデーサイレンス)。阪神牝馬特別(G2)とマイラーズC(G2)の勝ち馬で、エリザベス女王杯(G1)3着、秋華賞(G1)4着の実績を持つ。これだけの実績を持ちながら繁殖入り出来なかったのは厩舎で火事が起き1棟全焼したため。悲しい事にエガオヲミセテを含む22頭が焼死してしまった。
カーリーエンジェルの第3仔アドマイヤハッピー(父トニービン)は紫苑S(OP)3着程度の実績しかないが、産駒のウォータクティクス(父ウォーエンブレム)がダート転向後無傷の6連勝で2009年アンタレスS(G3)を制した。
そしてカーリーエンジェルの第4仔はG1ウィナー オレハマッテルゼ(父サンデーサイレンス)。2006年の高松宮記念(G1)覇者である。
カーリーエンジェルの第10仔フラアンジェリコ(父ネオユニヴァース)は2015年の京成杯オータムH(G3)を13番人気で制覇し、3連単222万円と波乱の立役者になった。G1馬1頭、重賞馬2頭を輩出したカーリーエンジェルは間違いなく名牝だ。

他にもダイナカールの孫に実力馬がいる。馬名はフラムドパシオン(父クロフネ)。ダイナカールトニービンとの間に産まれたカーリーパッションの仔で、デビューから3走は芝のレースを使われた。転機となった4走目の2歳500万下(中山ダート1800m)で、なんと後続を2.4秒ちぎる圧勝を見せた。続くヒヤシンスS(OP)も3 1/2馬身差で完勝。次走にUAEダービー(G2)を選択した。結果はディスクリートキャットの3着に敗れたものの、世界の強豪相手に善戦した。海外遠征後に屈腱炎を発症し、2年超のブランクを余儀なくされた為G1を制覇は叶わなかったが、秘めたるポテンシャルの高さから重賞未勝利馬ながら種牡馬入りを望む声が多かった。隠れた名馬である。
その他ダイナカールを起点に3代先にも重賞ウィナーがいる。それがアイムユアーズ(父ファルブラヴ)だ。アイムユアーズダイナカールサンデーサイレンスとの間に産まれたセシルカットにエルコンドルパサーを交配したセシルブルースの仔。アイムユアーズフィリーズレビュー(G2)等重賞4勝、阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)2着、優駿牝馬(G1)4着の実績を持つ。
3代先の重賞ウィナーはまだいる。ダイナカール×サンデーサイレンスエルフィンフェザーにタニノギムレットを交配させたエルフィンパークの仔、ブレスジャーニー(父バトルプラン)で2歳時にサウジアラビアロイヤルC(G3)と東京スポーツ杯2歳S(G3)を制した。骨折で3歳春を棒に振ったが、秋はチャレンジC(G3)3着と力を見せた。無事ならクラシック戦線を賑わせてくれたことだろう。

募集価格が3,400万円と割高なのは気になるところで、損益分岐点がなかなかに高いハードルとなりそうだが、パロクサイド系というとてつもない牝系を絶やす事なく次代へ繋ぐために、本馬に出資を検討してみてはどうか。

父は新種牡馬サトノクラウン。未知の魅力に賭けるには面白い存在と言えよう。